環境問題への対策がビジネスを広げている。周知のようにエコカーは政府の助成もあり過去に例を見ない売れ行きを示しており、代表的な再生可能エネルギーである太陽光発電も多数の企業が参入している。さらにビル・エネルギー・マネジメントやホーム・エネルギー・マネジメントといった省エネにも注目が集まっている。
ところで一般家庭やオフィスでのエネルギーは、実際にはどこに使われているのだろうか。ある調査によると、一般住居やオフィスビルなどでは空調で約半分のエネルギーが消費されているとのことである。よって、空調で使用されるエネルギーを削減することが省エネにはインパクトが大きいと考えられる。
空調による電力負荷を平準化する技術のひとつとして蓄熱技術がある。これは深夜電力等を利用して冷熱あるいは温熱を作り、これを蓄熱材料に熱エネルギーを蓄えて必要となる昼間に利用するものである。とくに冷熱需要は夏の昼間にピークを迎えるため、平準化は重要な技術となる。
冷熱蓄熱は古くから開発が行われている技術領域である。その開発動向を弊社XLUSを用いて分析した。ここでは「蓄熱」と「冷熱」を明細書中に含み、かつ「冷凍庫」や「冷蔵庫」という言葉を含まない特許を収集した。収集した特許文献をもとに動向を見ると、1993年以降、100件以上の特許が毎年公開されている。公開数のピークは2000年にあり、その後2006年から2007年にかけて減少しているが、2008年には再度150件程度まで回復しており、未だ関心の高い技術領域となっていることがわかる(図1参照)。
図1.冷熱蓄熱に関連する特許件数の推移(2009年は外挿値)
冷熱蓄熱関連プレイヤーを見ると、1993年以降で見た場合には、ダイキン工業、東芝、日立製作所などが挙げられる。なお、ダイキン工業は公開年ベースで1998年に、そして東芝は1996年にピークがそれぞれある。2004年以降に着目すると、JFEエンジニアリングおよびトヨタ自動車が件数を伸ばしており、トヨタ自動車は2005年から、そしてJFEエンジニアリングは2007年以降に急増している。
図2.冷熱蓄熱関連の主要なプレイヤー(1993年以降公開特許の件数による)
XLUS Whiteを用いて2001年以降に公開された冷熱蓄熱に関連する特許公開公報、約1300件をクラスター解析し俯瞰した。結果を図3に示す。主要な技術領域は氷蓄熱や熱交換器となっており、蓄熱材料としては、水和物や吸着剤、エマルジョンなどがある。また建築物の躯体への蓄熱などに関する技術が出願されている。
ダイキン工業、東芝、日立製作所といった比較的早期に参入したプレイヤーでは、氷蓄熱に関する出願が多く見受けられる。一方、2007年から特許件数が急増しているJFEエンジニアリングでは、水和物を蓄熱材として利用する技術が出願されており、従来技術とは一線を画するものとなっている。氷を利用しない蓄熱材料としては、樹脂や油性物質系エマルジョンを利用する技術が開示されており、例えば日本触媒などが参入している。そのほか、マイクロカプセル蓄熱材料や吸着剤の利用、さらには相転移を利用した蓄熱技術なども検討されており、現在主流である氷蓄熱よりも高効率な蓄熱技術の登場が期待される。
ポスト京都議定書では2020年までに2005年比で15%の排出削減を中期計画とする案が政府より出されている。8月末に控える総選挙次第では、より高い目標が掲げられる可能性もある。目標を達成するには、エネルギーを「創る」だけではなく、「貯める」、「使わない」技術の開発も重要となる。
図3.冷熱蓄熱関連技術の俯瞰図(2001年以降)


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