SiCパワーデバイス―ハイブリッド車の駆動系の要となる技術
不振が続く自動車業界の中で、ハイブリッド車が高い人気を集めている。4月にはホンダのインサイトが登録車販売で首位となったのに続き、5月、6月はプリウスが首位になっている。とくに6月のプリウスの販売台数は軽自動車も含めてトップに立つという人気ぶりである。
人気を集めているハイブリッド車であるが、期待されながら今回搭載されなかった新技術がある。ひとつはバッテリーにリチウムイオン電池ではなくニッケル水素電池が搭載されたこと(2009年5月17日に関連記事)、そしてもうひとつがモータ駆動の要であるインバータにSiC(炭化ケイ素)などのワイドギャップ半導体ではなく、従来Si系半導体が利用されたことである。
ワイドギャップ半導体は、従来Si系半導体よりも絶縁破壊強度が高く、電力損失を少なくすることが出来るうえに装置の小型化が図れる。そのため、ハイブリッド車をはじめとするインバータ応用機器への展開が期待されている。そこでSiCのスイッチング素子応用に関する動向について特許情報をベースに俯瞰した。パワーデバイスに関しては、材料名が要約や請求項では具体的に記載されていない特許も多いが、ここではSiCのスイッチング応用を明確に記載している特許のみを抽出して解析を行っている。
1995年以降に公開された特許件数の推移を見ると、2001年以降に件数が持続的に増加している。SiCのパワーデバイス応用自体は古くから検討されているものの、現在においても活発な研究開発がなされていることが伺える。

図1.日本国内におけるSiCスイッチング素子に関連する特許公開数の推移
SiCスイッチング素子に関連する技術開発動向を俯瞰するために、弊社XLUS Greenの特許配置評価機能を利用して、特許間の相互類似性を可視化した。特許配置評価機能は、最大300件までの特許の相互の類似性を明細書全文に基づいて相互に評価し、2次元上に表現したものである。俯瞰図全体を見ると多数の特許が密な状態で配置されており、各社とも比較的接近した領域での厳しい開発競争が続いていることが予想される。また主要なプレイヤーとしては、日立製作所、住友電気工業、パナソニック、三菱電機、関西電力などが挙げられる。一方、輸送機器関連企業では日産自動車およびデンソーからの出願が目立つ。主要3社の出願領域を図2に示す。

図2.主要プレイヤーの出願領域(図中、紺色でマーク)
SiCスイッチング素子の技術開発の変遷を見ると、年次を追うごとに開発の中心が集約される傾向が見られる(図3)。通常は要素技術開発~アプリケーションという流れを取るために、レーダー図で見ると年を追うごとに周辺部に特許出願が増える傾向にあるが、SiCスイッチング素子の場合は様相が異なっている。この要因としては、ひとつにはスイッチング素子というアプリケーションが限定された領域の技術を俯瞰したことがあるが、それに加え、開発ターゲットに関して開発プレイヤー間で共通性が出てきている可能性もある。集約が生じつつある領域の特許を見ると、モータ制御関連技術、とくに低損失化が中心となっているようである。
SiCパワーデバイスは省エネやインバータ回路の小型化の切り札として期待の高い技術である。とくに電力を駆動源とする自動車は今後市場拡大が見込まれている。さらにハイブリッドからプラグインハイブリッド、そして電気自動車へと変遷していくことが予想されており、電力駆動の占める割合は大きくなる。そのなかでエレクトリックパワートレインの基幹部品となる高性能インバータ(およびコンバータ)の開発は重要な位置づけとなる。ホンダがロームと共同でSiCデバイスを用いたパワートレインを2008年に開発したように、SiCデバイスに関するノウハウを持つ各メーカと駆動系のノウハウを持つ自動車メーカの連携が、今後も進むものと考えられる。

図3.SiCスイッチング素子に関連する出願領域の推移(国内)
以上


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